福田正博はW杯に希望がほしい。「個の力より、組織力を高めてくれ」 (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 ハリルホジッチ監督は、ウクライナ戦ではDFラインを今までの先発メンバーに近い形に戻している。より本番を想定した布陣なのだろうが、テストマッチが残り少ないことを考えれば、マリ戦も同じようなメンバーで臨むべきだった。とりわけ右SBは、所属チームでは左SBでプレーしている宇賀神ではなく、槙野や植田直通の適性を試すほうが有益だったように思える。

 ひとりでも多くの選手を試したい気持ちはわかるが、W杯に連れていける選手は23人しかいない。CBのファーストチョイスが吉田と昌子になるとして、DFにアクシデントがあった場合に、槙野や植田がCBとSBの両方をバックアップできるようになれば心強い。その2人よりも適性がある選手を、新しい戦力の中から見きわめている時間はもうないからだ。

 W杯が間近に迫ったこの時期は、メンバーを固めてチーム戦術を浸透させ、本番に向けて組織力を向上させるべきタイミングだ。すでに15人のメンバーを決めているブラジル代表がその好例だろう。

 日本代表はメンバーに残るための"サバイバル"が強調されているが、それは「23人のW杯メンバーのうち、最後のピースとなる2、3人が誰になるか」ということであり、今回のように「まだ多くの選手にチャンスがある」という状況を指すことは珍しい。
 
 ハリルホジッチ監督も、昨年末の時点では「3月の強化試合はある程度メンバーを固定して臨みたい」と発言していた。そこからの過程で、多くの故障者が出てしまったことが、その決断を遅らせている要因のひとつだろう。

 そもそも、ハリルホジッチ監督は核となる選手を置かずにチームを作ってきた。たしかに、海外リーグで活躍する選手が増えて代表メンバーが集まる時間が減ったことを考え、組織力や連係よりも「個の力」に頼った"堅守速攻"の戦術をとることは理にかなっている。実際、ハリルホジッチ監督はこの戦術を得意としており、4年前のブラジルW杯ではアルジェリア代表をベスト16に導いた。

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