中田浩二は考えた。「元選手が経営サイドに身を置くことは重要だ」 (3ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko   井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

――今の仕事に就いたことで、そういう支えがあることを、改めて気づいた部分はありますか?

「そうですね。本当に応援してくれている。でも、選手との距離を感じている部分があるというのは、この仕事をしないとわからないことでした。同時にサッカー選手として生きていくことができるのは、いろいろな人の支えがあったからこそということも強く感じました。『いっしょになって戦っている人』の存在を選手にも伝えたい。そこは元選手だから話せることもあると思うので」

    ――今、新しい環境で、ご自身の力不足を感じるのはどんな点ですか?

「たくさんありますよ。確かにずっとサッカーをやってきたので、たとえば、エクセルやワード、パワーポイントなどをうまく使えるかと言われたら、そういう普通の人ができることができない。そして、プレゼンテーション力だとか、ファイナンスの知識もないし、ビッグデータから何を抽出するのかというような思考も弱い。実務能力はまだまだ足りないと思っています。

 それを認識したうえで、時間はかかるだろうけれど、学んでいくしかない。元選手というバリューに頼っているだけでは、この仕事は続けられないという覚悟はあります。実務面で仕事ができないとなれば、迷惑をかけてしまう。そこは元選手だからといって、甘えられるわけじゃない」

――鹿島アントラーズというクラブは、事業面、経営面でも「攻めの姿勢」というか、スタジアムの指定管理者になったりと、いろいろなチャンレジをしているなと感じます。

「スタジアムの有効利用をはじめ、いろいろな施策、仕掛けをしていかないと生き残っていけないクラブだという自覚があります。30km圏内をホームタウンと考えると、鹿島は半分が海だし、人口も少ない。立地としては恵まれているわけではないので、チャレンジし続けなくてはならない。

 先日、スペインのデポルティーボへ行ったのですが、町(ア・コルーニャ)の規模としては鹿島と変わらないけれど、ソシオが2万7000人もいる。鹿島はその10分の1程度ですから、まだまだやれることはあるんじゃないかと」

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