FC琉球に入った播戸竜二「これまでの20年以上のものを得る予感」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 だから今は、沖縄に来て、サッカーをやめるって決断をしなくて、ホンマによかったと思ってる。というのも、自分がこの土地やクラブの現状を受け入れてからは、プロとして20年かけてつかんだこと以上のものを、この1年で得られそうな予感があるから。

 この20年はほぼ同じ流れの毎日を過ごし、常に野心を持って、一歩一歩積み重ねて、試合に出ること、ゴールを決めること、代表に選ばれることがすべてだった。そうやって上を目指してきた時間があったから、今の俺がいるのも事実やけど、でも、ここに来た以上、俺はこの1年でその20年とは違うものをつかんでやると思っている。今は心からそう思って、この沖縄にいるよ」

 その胸に芽生えた新たな感情を露(あら)わにする彼に、その情熱の源について尋ねてみる。プロを目指していた頃、あるいは、ガンバ大阪で数々の"タイトル"の歴史に貢献し、日本代表として活躍していた時代。もしくは、大宮アルディージャのJ1昇格に力を注いでいた時代の情熱と、今のそれは変わらない温度なのか、と。

 その質問に、ゆっくりと思考を巡らせ、言葉が返ってくる。

「サッカーそのものへの情熱は変わらないけど、プロサッカー選手としての情熱は残念ながら、若いときと一緒とは思わない。若いときのように自分のことだけを考えて、ガムシャラに突っ走っていればよかった時代とは違って、キャリアを積むことによって、自分の立ち位置、求められることも変わってくるしね。

 実際、俺も年齢が上になるほど、必然的にチームをまとめることも考えるようになったしさ。本来は、そんな柄じゃないのに(笑)。でも、それを含めてチームに必要とされてきたと考えれば、それが自分の"価値"だと思うけど、その役割も意識した情熱って、子供の頃やプロになったばかりの頃の『サッカーが好きでたまらん!』って情熱とは全然、種類が違う。

 でもそれが、このサッカー界の現実やから。いくつになっても、好きにボールを蹴って契約してもらえる選手なんて、世界中を見渡してもほぼおらん。

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