イラ立つ小林悠。王者フロンターレ、油断のドローでACLは崖っぷち (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ところが、結果は「求めていたものとは大きく違った」(鬼木監督)。

 この試合、川崎は決して自分たちのよさを出せなかったわけではない。鬼木監督は「選手は自分たちらしさを出して戦ってくれた」と言い、先制ゴールを決めたDFエウシーニョも「自分たちのスタイルは出せている」と振り返った。

"川崎らしさ"が発揮できた要因のひとつは、メルボルンとのかみ合わせのよさだった。

 メルボルンの特長は、川崎同様、しっかりとパスをつないで攻撃を組み立てるボールポゼッションにある。だからこそ、川崎のよさを消すために"寝技"に持ち込むようなサッカーをすることなく、堂々と組み合った。メルボルンのケヴィン・マスカット監督が語る。

「Jリーグも含めて川崎の試合は数多く見たが、いつも60%に達するほどボールポゼッション率が高い。だが、我々はそれに対して守備に回るのではなく、ポゼッションで対抗しようとした」

 結果、お互いが特長をぶつけ合った試合は、「両チームともいいプレーで攻撃し合う、白熱したゲームになった」(マスカット監督)。

 ボールポゼッションによる攻撃力を武器とする川崎にとって、メルボルンの姿勢はまさに"望むところ"だった。実際、キャプテンのFW小林悠は、「前半からやりやすかった。(J1優勝した)昨年みたいな感覚でやれていた」と、試合を振り返っている。

 にもかかわらず、川崎は勝ち切れなかった。

 自分たちのよさやスタイルを出せたことは、悔しい引き分けのなかに見出すことのできるポジティブな要素ではあるだろう。だが、その一方で、それを出せたのに勝てなかったことの痛手も決して小さくはないはずだ。

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