土居聖真「ボールを持つのが
怖くなるほど、鹿島はミスに厳しかった」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

遺伝子 ~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(2) 
土居聖真 後編

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 2018年2月25日、清水エスパルス相手に0-0という結果で、鹿島アントラーズのリーグが開幕した。開始から自陣に押し込まれる時間が長く続く。その理由を「気持ち」だと大岩剛監督は話した。ホーム開幕戦で上位チームを叩きたい、そんな相手の勢いを「受けて」しまったのだ。挽回しようにもミスが多くてできない。

「ミスをしてしまうと、どうしても自分たちの陣地でごちゃごちゃする回数が多くなる。前半、(クォン・)スンテがPKを止めて助けてくれたけど、0-0で終えられたというのは、まあ、よかった。前半に関していえば、首の皮がつながった感じがあるよね。もっと上下動できれば、プレーで示すこともできるんだけどね」

 8季ぶりにJリーグ公式戦に出場した内田篤人はそう振り返った。自身のコンディションを考えることは、同時にチームについて考えることになるのだろう。その表情は硬い。それは内田に限らない。監督もそうだし、三竿健斗も同様だ。ロッカールームから姿を見せる選手は、やりきれないといった顔をしている。

「今の選手には経験が足りない。それを積む時間は必要だし、少しずつかもしれないけど、前進していると思うよ」

 中田浩二C.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)が以前、そのように語っていた。

 勝ちながら、選手を育て世代交代し、そして、また勝ち続ける。その過程に型にはまったマニュアルも法則もない。チームを構成する選手それぞれが、自分の立場で奮闘し、悔やみ、学び、考え、改善していくしかない。経験を積み学ぼうとする若手も、それを支えようと思うベテランも同じだ。そして、中堅と呼ばれる層の選手たちもまた、自分を鼓舞し、自身やチームの成長を促そうともがいているのだ。 

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