「特殊サッカー」に変身したマリノス。
2冠セレッソはどう対応したか

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 たった2ヵ月で、これほどまでに変化を遂げているとは、セレッソ大阪の選手たちも想像がつかなかったに違いない。横浜F・マリノスのことである。

終了間際に同点弾を決めたセレッソの柿谷曜一朗終了間際に同点弾を決めたセレッソの柿谷曜一朗

 2018年元日、両者は天皇杯の決勝で顔を合わせ、C大阪が延長の末に横浜FMを破り、同大会で初優勝を飾った(前身のヤンマー時代を除く)。その試合では開始早々に失点を喫し、前半は相手にペースを譲ったが、後半に入ると猛攻を仕掛けて試合を振り出しに戻す。さらに延長に入った95分、MF水沼宏太が決勝ゴールを奪い、粘る横浜FMを振り切った。

 堅い守りと素早い攻撃を軸としたスタイルで、天皇杯だけでなくリーグ戦でも上位進出を実現した両者(C大阪=3位、横浜FM=5位)だが、攻撃面に一日の長があるC大阪がいずれの戦いでも横浜FMを上回った。そんな印象を抱いた昨シーズンだった。

 守りは堅いが、攻撃面に課題を残す――。それが昨季までの横浜FMだった。そのチームからFW齋藤学(→川崎フロンターレ)とMFマルティノス(→浦和レッズ)という攻撃の軸を担ったふたりが流出し、一方で目立った補強はなかった。

 となれば、特長である堅守の質を、さらに高めるのみ。そう考えるのが自然だろう。

 ところが、今季から指揮を執るアンジェ・ポステコグルー監督の考えは大きく違ったようだ。2月25日に行なわれたJ1リーグの開幕戦、C大阪相手に横浜FMがとった戦略は「ハイプレス・ハイライン」の超攻撃的なスタイルだったのだ。

 高い位置からプレスを仕掛け、最終ラインもハーフウェイライン付近を維持。GKはゴールを空けて、その背後のスペースを埋める。ボールを奪えば鋭いショートカウンターを繰り出し、両サイドのスピードを生かして相手を押し込んでいく。興味深いのは両サイドバックの位置取りで、オーバーラップを仕掛けるのみならず、逆サイドにボールがあれば中央に絞って、まるでボランチのようなポジション取りをする。

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