「かつての広島」はもういない。
ミシャ率いる札幌に勝っても前途多難

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 ところが後半に入ると、防戦一方の展開を余儀なくされる。

 札幌を率いるのは、"かつての広島"を築いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督である。これまでの堅守速攻スタイルから脱却し、ポゼッションスタイルへの移行を図る指揮官のもと、札幌は確かに生まれ変わった姿を示していた。まだチームを作っている段階であり、決してそのパス回しはスムーズではなかったが、指揮官の意図をくみ取った札幌の選手たちには、ボールを大事にする意識が見られた。

 一方の広島はボールを奪っても、ターゲットマンのFWパトリックをめがけた長いボールを蹴り込むのみ。そこでつながればチャンスを生み出せるが、多くの場合はそうはならなかった。ボールを大事にする札幌と、イチかバチかの確率の低い戦法を選択した広島。両者の明暗がくっきりと分かれたのは、当然だった。

「もう、後半は割り切ってやっていましたよ」

 青山はそう振り返る。長いボールに頼ったのは、決して意図的だったのではなく、そうせざるを得なかったというのが真実だろう。

「キャンプから全然時間がなかったですから。やっているサッカーも変わったし、システムも変わった。J1相手の実戦もしていなかったから、正直、どうなるかわからなかった。どういうサッカーをするのか、まだ自分たち自身も見えていないところがある」

 城福監督はキャンプ中に、さまざまなシステムや組み合わせを模索した。4−3−3、4−2−3−1、3−4−2−1、そして4−4−2。この日は4−4−2を採用したが、選手の質を把握し、最適解を見出す作業は決して容易ではない。他チームよりも始動が遅かった影響もあるかもしれない。時間が限られたなか、指揮官自身もまだ手探り状態にあるのだろう。

 当然、選手たちも戸惑いは隠せない。本来はつなぎたいのだろうが、連動性がないのだからセーフティに前に蹴り込むしかない。ビルドアップに定評があるDF千葉和彦がクリアに逃げるシーンを見たときには、正直、がっかりさせられた。

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