永井秀樹の育成。「天才といわれ、3年後に消える選手にしたくない」 (4ページ目)

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

 来季の「10番」を託され、キャプテンにも任命された森田晃樹(もりた・こうき/2年)は、プレーヤーとして新たな境地を見出していた。

「永井監督になってから、逆サイドにチェンジするなど、攻撃パターンが増えました。普段の練習では"止める""蹴る""運ぶ"という、サッカーの基本を重視しています。個別には、オフ・ザ・ボールの動き、ポジショニングについて丁寧に教えていただき、選手としての幅が広がりました」

 森田は現役時代の永井のように、切れ味鋭いドリブルと足もとの技術に秀でた、かつての"ヴェルディらしさ"が漂う選手だ。これまで世代別の日本代表にも選出されてきて、周囲からは「トップ昇格は間違いない」と言われている。

 しかし永井は、そんな森田に甘い言葉をかけることはなかった。永井が言う。

「トップに昇格できても、(チームに)貢献できる選手でなければ何の意味もない。『うまいね、天才だね』ともてはやされて、3年後、消えた選手を大勢見てきた。晃樹には『彼、うまかったけど、今何しているの?』という選手にはなってほしくない。(チームに)本当に必要とされる選手になってほしいし、世界で活躍できるレベルの選手にまで育てたいと考えている。

 そのため、中途半端な実力で勘違いしないように、あえてベンチから試合を見させたり、本来のポジションとは違うセンターバックで起用したりもした。選手から嫌われようと、憎まれようと、一向に構わない。自分の仕事は選手に好かれることではなく、選手の将来、未来を切り開くことだから」

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