ヴェルディユース初の教え子の最終戦で、永井秀樹監督は何を語ったか (3ページ目)

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

 そして2014年、永井は43歳にして7年ぶりにヴェルディ復帰を果たした。

 若返りを図るクラブの方針に反した移籍に首を傾げる関係者もいた。しかし、永井は実力で出場機会を得ると、「J屈指のドリブラー」と呼ばれた頃とは違うプレースタイル、状況判断に優れたプレーや、針の穴を通すような絶妙なスルーパスなどを駆使してチームの勝利に貢献した。

 練習でも"生きた教本"として、若手指導に尽力するなど、育成面でもクラブに欠かせない存在となった。

 2016年シーズンのホーム最終戦――。

 味スタのスタンドには『静かなるレジェンド 永井秀樹』と記された横断幕が掲げられた。

 そこには、数え切れないほどの逆境を乗り越えて、45歳までピッチに立ち続け、最後にプロサッカー選手としての原点となるクラブに戻り、全身全霊をかけて戦い続けた男に対する、サポーターからの感謝の気持ちが込められていた。

 そうして、プロサッカー人生に終止符を打った永井は、初めて率いたユースチームの最後の試合前、こう言ってミーティングを締めくくった。

「今日は1分、1秒も無駄にせず、全力を尽くそう。それでダメなら仕方がない。結果の責任は、すべて監督である自分にある。(結果について)みんなは一切、気にする必要はない」

降格の可能性がある中でも
永井が勝敗よりも大事にしたこと

 ヴェルディユースは最終節を残して、7勝3分7敗。ユース世代最高峰となるプレミアリーグ昇格のチャンスはすでに消えていた。それどころか、結果次第ではプリンスリーグから降格する可能性があった。

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