ベンゲルに挨拶に来たジョージ・ウェア。グランパスの選手は仰天した (4ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 トレーニングは早朝、午前、午後の3部練習が組まれ、フィジカルトレーニングと戦術トレーニングを並行して行なった。

 早朝メニューはクロスカントリーで、ベンゲル自ら先頭になってベルサイユ宮殿の森を1時間以上も走り続けた。そして午前中は、このキャンプからチームに加わったフランス人フィジカルコーチのダール・ティビュースの指導のもと、フィジカルトレーニングが課せられ、インターバル走やサーキットトレーニングが行なわれた。

「ポジションごとに走る距離が違うんです」と、平野が証言する。MFはスピードと持久力の双方を必要とするので、タイム設定が厳しく、本数も多い。一方、FWやDFはMFよりも設定が緩く、GKは本数もかなり少ない。

「試合では中盤の選手が一番走るじゃないですか。だから、僕らが一番長い距離を走らされました」

 午後の戦術トレーニングでは約束事の徹底が図られ、オートマティズムに磨きをかけた。左ウイングの平野を例に出すと、ボランチの浅野哲也がトラップした瞬間にどう動くのか、ストイコビッチに対してどうサポートするのかといった具合に、近いポジションの選手との関係性がシチュエーションに応じて整理されていった。

「フランスキャンプは3つのポイントがあったと思うんです」

 そう中西は分析する。中西はもともと守備的なMFだったが、ベンゲルと英語で直接コミュニケーションが取れたため、ベンゲルの意図をいち早く理解し、中盤のユーティリティプレーヤーとして変貌を遂げつつあった。

「3つのポイントとは、ウェアがやってきたり、パルク・デ・プランスで歓待されたりして、僕たちのベンゲルに対する信頼の念が強まったこと。涼しい気候のなかでフィジカルを徹底的に鍛え直せたこと。それと戦術面、チームの約束事の整理です。あと、帰国してから剛(ごう)をサイドバックからセンターバックにコンバートして、最終ラインの顔ぶれが定まったのも大きかったですね」

 剛とは、この年の大卒ルーキー、大岩剛のことである。

(つづく)

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