「5、6人は長崎出身の選手を」髙田社長が描くV・ファーレンの未来 (3ページ目)

  • 刈部謙一●文 text by Karube Kenichi photo by Kiyoshi Ota-JL/Getty Image、山頭範之●撮影 photo by Ymagashira Noriyuki

 ただ、選手に関してはアカデミーやスクールの課題がありますから、そこの改革に力を入れていくことになるでしょう。そこは強化していきますよ」

――髙田社長は、監督、選手についても社員という考え方で接し、人間としての豊かさ、幸福を同じように考えるというお話をされていますが、サッカー選手の場合、社員という考え方はなかなか通じないかなという気がします。彼らはケガしたら終わってしまうし、監督の場合はクビになるというリスクを常に持っています。簡単にクビにできるし、しなければいけないときもある。その差をどうお考えですか?

「私は、そこはこう考えます。まず、選手も監督も特別なものではないです。例えば、極端に言えば選手は頑張れば1億円だってもらえます。それはプロの世界に入っているからで、そこは自分の責任で選んでいる。それでも、人としての役割は同じだと思っています。

 私は監督も選手もスタッフも社員も、同じ位置にいることが大切だと思っています。そうでないと、相手を考える立場に立てなくなるからです。一方で経営者としては、選手生命が35歳や40歳で終わるのであれば、選手の将来に対して責任を持つ必要があると思っています。引退後の選手の生き方をカバーしてあげることが経営者としての役割だと思っています。だからこそチームを強くしたいです。

 選手には選手の将来があるので、「頑張れ」だけではできないところもありますが、人に向き合うという点ではまったく同じ姿勢でないといけないと思っています。ですから、特別な扱いはしたくないですね。勘違いや間違ったことが起こるかもしれないですから」

――特別な扱いというのは?

「ファンがいて、名声があって、『あなたは特別な人だ』となることです。僕が勉強している世阿弥の中で、好きな言葉があります。能役者というのは声変わりするのが13歳から17、18歳。一番輝くのが22、23歳です。22、23歳のときは誰でも美しい年頃ですよね。その22、23歳の美しいころを『時分の花』と呼びます。それを『真の姿』と勘違いしてはいけない、と言うのです。

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