名古屋にフットサル日本一を奪還させた
「スペインで認められた男」

  • 河合拓●取材・文・撮影 text & photo by Kawai Taku

 マグナ・グルペア残留と名古屋オーシャンズへの復帰。ふたつの選択肢を与えられた吉川は、「自身の夢を追うために、こころよく送り出してくれたクラブを助けたい」という気持ちもあり、3シーズンぶりにFリーグのピッチに立つことを決意したのだった。

 今シーズン、10連覇を逃した名古屋オーシャンズは選手を大きく入れ替えた。スペインから復帰した吉川に加え、日本代表のFP西谷良介をフウガドールすみだから獲得。前年の反省を踏まえて、得点力があるうえに守備もサボらないブラジル人選手を4人(ペピータは来日直後に負傷してFリーグの試合は出場せず)も補強した。

 これだけ多くの血が一度に入れ替わると、チームが機能しなくなることもある。しかし、名古屋はシーズン序盤から首位を快走し、6試合を残して早々とプレーオフ進出を決めると、2節を残してレギュラーシーズン1位を確定させた。

 シーズンを戦うなかで、吉川は葛藤があったことを認める。常に生活をかけた選手同士がぶつかり合うリーガ・ナシオナルでは、毎試合がプレーオフ・ファイナルのようにシビれる試合だった。しかし、10チーム以上がセミプロのFリーグでは、緩い試合が存在する。

「やっぱりどうしても、スペインと比べちゃう部分はあります。毎試合100パーセントではやっていましたが、気持ちの面で難しい試合はありました。スペインのときのように120パーセントが引き出されるような試合がほとんどない1年でしたから、そういう意味では非常に苦しかったです」と、本音をこぼす。

 だからこそ、プレーオフ・ファイナルでのプレーは際立って見えた。吉川は「フットサル選手」と言われたときに、パッと想像しがちな派手な足技を連発するドリブラー的なテクニシャンではない。左右両足でボールを扱える高いテクニックを有し、攻守においてチームを円滑に機能させる頭脳・戦術眼も持ち合わせる。それでも最大の持ち味は、一瞬のスキがあればボールを取り切ってしまう前線でのプレッシングの強さだろう。

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