福田正博の心に残るもの。「世界で一番悲しいゴール」を決めた後で... (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun

 泣きながら歩いていると、広島の森保一と目が合った。抱き合うと、さらに涙があふれてきた。『ドーハの悲劇』を経験した同志の姿に、あのときの思いが少し重なってしまったのだ。

「来年、上がってくればいいよ」

 森保は、そう優しく声をかけてくれたという。

「そんなこと言う前に、なんで手を抜いてくれなかったんだって思ったよ」

 試合後の挨拶を終え、福田はそのままベンチに座り、残りの涙をすべて流した。泣き終わると、すごくさっぱりした気持ちになったという。そのせいか、試合後のメディア対応では、黙って通り過ぎることもなく、いつもより冷静に応じることができた。

 福田の気持ちは、J2降格の現実を受け入れ、穏やかになっていた。

 翌日、福田は自宅でも取材を受け、そのまま家の近所の公園まで歩いていった。

 すると、その公園でア・デモス監督がひとりで散歩していた。福田は「何で、こんなところにいるんだろう」と思いながら、彼の姿を視線で追った。その表情はげっそりとしていて、存在自体が小さく見えたという。

「前日までは『この監督とは二度と一緒に仕事はしたくない』と思っていたけど、そのやつれた表情を見たとき、『プロ監督って、こうなんだ』と痛感させられた。だって、そんな表情とか、弱さとか、チームにいるときはそれまで一度も見せたことがなかったからね。

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