内田篤人からの電話に絶句した清武弘嗣。日本復帰の可能性は前にもあった (3ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Takashi Aoyama/Getty Images

 もちろん帰国やJリーグへの復帰は何も悪いことではない。だがこのときの内田の場合、負傷から復帰こそしたものの、まだ十分に試合出場を果たしていない。つまり、勝負をしたうえで帰国を決断したというわけではない。だからこそ清武は絶句し、内田は電話をすることであえて帰国に自分を向かわせようとした。そうしないと、帰国へと気持ちが動かなかったのだろう。ドイツでのプレーに未練があったということだ。

 その後、ウニオン・ベルリン移籍の話が決まり、内田はさらに半年間、ドイツで再チャレンジをすることになる。結局、そのウニオン・ベルリンでも先発出場1試合、途中出場1試合にとどまったが、内田の気持ちのなかには「ドイツでやりきった、2部にいってまでチャレンジした」という納得の手応えが残った。

 鹿島で会見や練習に臨む内田の表情がとてもすっきりしているのは、このあたりの精神的な整理がついているからだろう。「欧州だから」「日本だから」ということではなく、プレーできる環境でまずは試合に出るという優先順位もはっきりした。

もちろん勝負はこれからだ。

「体が動くうちに戻ってきたいと思っていた」

 内田はプレーでこの言葉を証明しなくてはならない。そんな内田を見たいと渇望する人は少なくないはずだ。

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