証言・福田正博。あの「何の意味もないVゴール」に至る屈辱のシーズン (6ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「ガンバ戦で(自ら)結果を出して勝った。そのあとの大事な試合でベンチ外というのは、正直すごくショックだったし、自分の中で消化し切れないものがあった。それでも試合に勝っていれば、ベンチ外も受け入れることができたかもしれないけど、内容がひどくて......。しかも、0-2と完敗。『ふざけんな』って思ったよ。

 この神戸戦が(自分と)監督との距離が離れたポイントになった。もちろん、ベンチから外された俺にもセカンドステージで結果を出せていなかった責任はあるよ。でも、あのとき感じた本音を言わせてもらえば、対戦相手の監督にあんなことを言われているようじゃあ、『勝てないな』って思った」

 神戸戦の前、ア・デモス監督はミーティングで「この試合を含めて、残り5試合が勝負になる」と語った。だが、その大事な5試合の初戦を落としてしまい、チーム内の空気が一変した。重苦しい雰囲気となり、もうひとつも落とせない――そんな悲壮感が監督の態度や表情からも漂い始め、それまではなかった危機感がチーム全体に充満し始めた。

 残り4試合は、ひとつも負けられない戦いとなった。そこから意地を見せたのは、福田だった。

 監督との距離は感じつつも、"エース"としての自負があった。ア・デモス監督と違って、福田は長年レッズの一員として奮闘し、「ミスター・レッズ」と称される存在である。愛着のあるチームの危機に、奮起しないわけがなかった。

 神戸戦のあと、続く市原戦で先発復帰すると、決勝ゴールを決めた。さらに次のベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)戦でも、1ゴールを決めて2-0の勝利に貢献した。

「監督を見返してやる。自分がチームを助ける。その思いだけだった」

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