証言・福田正博。あの「何の意味もないVゴール」に至る屈辱のシーズン (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ア・デモス監督が指揮していた欧州各国では、国内のリーグ戦でVゴールという概念もなければ、ルールもなかった。90分間の勝負に死力を尽くし、その中でいかに勝ち点を拾うか、それだけを考えればよかった。

 そのため、Vゴール方式では今までやってきたことが通用しないケースが出てくる。選手交代やそのタイミングを決断することはそのひとつで、Vゴールを知らなければ、そこでミスをしてしまう可能性が大きくなる。福田が言うとおり、4試合連続の延長Vゴール負けは、ア・デモス監督のルール上での"経験のなさ"が招いた結果とも言えるだろう。

 この4連敗の最中、福田はスタメンの座を失った。屈辱的なことではあったが、セカンドステージでは8試合を終えて1ゴール。自他ともに満足できるような結果を出せておらず、監督からの風当たりが強くなりつつあることは自覚していた。納得はできなかったが、反面、「仕方がないな」と思うところもあった。

「スタメン落ちの雰囲気は(自分でも)なんとなく感じていた。実際、結果が出ていなかったからね。それでも、4連敗を喫したあとの(第10節の)ガンバ大阪戦で、(先発の)FW盛田(剛平)がケガをして、すぐに自分が(交代で)ピッチに入って1点を決めた。結果を出したし、チームも勝って(2-1)、これで(チームも自らの立場も)『なんとか大丈夫だな』と思っていたんだけど......」

 続く第11節のヴィッセル神戸戦、そんな福田の思惑は粉々に打ち砕かれた。スタメン復帰どころか、ベンチ外という非情な通告を受けたのだ。

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