二冠のセレッソ。急に勝負強くなった陰に「ユン監督の秘蔵っ子」あり (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki  山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 3年ぶりにJ1の舞台に戻ってきたばかりのセレッソだが、今季のJ1では3位に躍進。加えて、ルヴァンカップでクラブ史上初となるタイトルを獲得したばかりか、天皇杯も制して二冠を手にした。

 セレッソは1995年のJリーグ参入以来、天皇杯で3度の準優勝を経験してきたのをはじめ、タイトルを取れそうで取れない時間を20年あまり過ごしてきた。ところが、ついにルヴァンカップ優勝で、"シルバーコレクターの呪縛"から解き放たれると、二度目の歓喜はわずか2カ月足らずで訪れた。

 現在もプレーする柿谷曜一朗や清武弘嗣、あるいは香川真司など、優れたタレントを擁しながらも、これまではどこか図太さやたくましさに欠ける印象があったセレッソだったが、突如として勝負強い集団へと鮮やかな変貌を遂げた。準決勝、決勝と、2試合連続の逆転勝利で優勝を手にした天皇杯は、まさにその象徴だろう。

 尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督が語る。

「チームとしてやろうとするプレーを、ひとりではなく、全員で表現できた。自己犠牲や献身、最後まであきらめずに戦うということが、体と精神に染みついたことが、勝利の原動力になったのではないだろうか」

 セレッソが勝負強さを手にする過程、すなわち、尹晶煥監督が目指すサッカーをチームに浸透させる過程において見逃せないのは、この試合で決勝ゴールを決めた水沼の存在である。

 今季から新たに指揮官に就任した尹晶煥監督とタイミングを一にして移籍加入した水沼は、サガン鳥栖時代にも同監督のもとでプレーした経験を持つ、いわば、尹晶煥監督の秘蔵っ子。常に足を止めず、ハードワークし続けられる背番号16が、セレッソの変貌に大きく影響していることは間違いない。

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