中村憲剛から小林悠へ。
抱き合う新旧キャプテンだけが知る大切なもの

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 中村からバトンを受け取る形で、今季よりキャプテンに就任した小林はシーズン序盤、その責任感の強さゆえ、チームをどう引っ張っていくべきかを模索して悩んでいた。

「今までは自分の仕事に集中すればいいと思っていたんですけど、やっぱりチーム内外のことというか、いろいろなことがあって、チームが勝つためにどうすればいいのかを考えすぎていた時期がありました。(今季から)オニさん(鬼木達監督)になって、攻守の切り替えとかも言われるようになったことで、まずは自分がそれを率先しなければと思いました。ただ、そこでパワーを使うようになると、得点のところで力を出せなくなってしまうこともあった」

 結果的に21勝9分4敗の成績でJ1王者に輝いた川崎Fだが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を並行して戦っていたシーズン序盤は苦しんだ。チームとしての歯車が噛み合わず、ACLも含めて4試合引き分けが続き、ストライカーである自身の得点も伸びない小林は苦しみ、もがいていた。その思い詰めた表情は、話しかけることすらはばかられるほどだった。

 その小林を俯瞰しつつも、まるで包み込むように見守っていたのが中村だった。あれはたしか4月下旬だったが、中村と小林について話をする機会があった。すると中村は、こんなことを言っていたのだ。

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