中村憲剛から小林悠へ。
抱き合う新旧キャプテンだけが知る大切なもの

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 逆転でのJ1初優勝が決まり、等々力陸上競技場が歓喜に包まれると、川崎フロンターレひと筋でプレーし、今季で15年目を迎えるMF中村憲剛は、両手で顔を覆い泣き崩れた。今シーズン、その中村からキャプテンを引き継いだFW小林悠は、仰向けに倒れ込み、喜びを噛みしめていた。しばらくすると、ふたりは、まるで歓喜の輪をかき分けるかのように互いを探し出し、強く強く、抱き合った。

J1初優勝を喜び合う中村憲剛と小林悠J1初優勝を喜び合う中村憲剛と小林悠 衝動ともとれるその行動を、小林はこう振り返る。

「自分が泣きすぎて、いろいろな選手に乗っかられて、わけがわからなかったんですけど、『憲剛さんどこだ! 憲剛さんどこだ!』って探したんですよね。だから目が合った瞬間に、ふたりで『うわぁ、ありがとう』って。憲剛さんと抱き合えて、泣き合えて、一生忘れられないですね」

 中村に同じことを聞けば、こう答える。

「たぶん、僕と悠にしかわからない関係がありますからね。僕はあいつが(フロンターレに)加入したときから知っていますし、成長してきた姿も見ている。今年キャプテンになって、苦しみながらも最終的に殻を破った姿も見ているので、僕は僕で思っているところもあるし、あいつはあいつで今までやってきたことも含めて感じていたと思います」

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