「落ちない甲府」のJ2転落。ファンは日が暮れても選手に寄り添った (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Masashi Hara-JL/Getty Images

 無論、甲府も手をこまねいていたわけではない。ブラジル人FWウィルソンが太り気味で動きが鈍かったことで見切りをつけ、同じブラジル人FWリンスを獲得し、さらにギリシャ系オーストラリア人FWビリーとも契約。しかし前者は決定力が乏しく、後者は戦力になっていない。

 皮肉か、必然か、後半アディショナルタイムに試合を決めたのはリンスだった。リンスは何度もため息をつくようなミスをし、右足でのフィニッシュにこだわって完全に読まれていた。それが最後のシュートは、右足を読んだDFが2人して片方のコースを完全に明ける、という僥倖(ぎょうこう)から生まれた。チーム19本目のシュートを、リンスが決めた。

「(降格理由としては)下位のチームに取りこぼした、というのが大きかったですね。(勝ち点差1と2の)広島、清水に2勝を与え、新潟にも勝ち点を与えてしまっている」

 吉田達磨監督はそうシーズンを総括し、こう続けた。

「前期はシュートを打てそうなところまで、後期はシュートを打つところまで、意図的にボールを運べるようになりました。そうやって攻められるようになったことで、最後のクオリティに委ねられるところになった。ひと振り、ひと外しが重要で、そこで決着をつけられなかった」

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