強いチームから勝てるチームへ。フロンターレ「黄金時代」への第一歩 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 どうすれば強いチームから勝てるチームに変われるのか。

 そんな難問に取り組んだのが、今季の川崎であり、今季から新たに就任した鬼木達監督だったと言っていい。

 鬼木監督が今季を振り返り、「僕のなかではターニングポイントのひとつ」として挙げたのは、J1開幕に先立って行なわれたAFCチャンピオンズリーグの水原三星(韓国)戦である。

 指揮官はこの試合、1-1で迎えた後半72分、MF阿部浩之に代えてDF奈良竜樹を投入している。「(相手に)サイドを使われ始めていたので、一回スペースを埋めて、後ろを安定させてから戦おう」との判断からだった。

 同点の状況でMFを1枚削り、代わってDFを投入することなど、従来の川崎であれば起こりえなかった交代策だろう。だが、鬼木監督は「もし敗戦していたら、そこからチームの歯車が狂ったかもしれない」と認めながら、「でも、あれは『簡単に負けないチームを作る』という決意表明だった」と明かす。

 もちろん、簡単に負けないチームを作ることは、楽な作業ではなかった。

「今年はキャンプから守備をやってきたが、それをやっていたら攻撃がおろそかになった」

 MF中村憲剛がそう語ったように、川崎は「負けないチーム」を意識するあまり、自分たちの本来の武器を見失いかけたこともあった。思うように勝てない試合が続き、中村は「勝つために(現在の攻撃的なスタイルとは)別の方向へいってもおかしくなかった」と振り返る。

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