アントラーズ、よもやのV逸。
「王者のメンタリティ」が最後に仇となる

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 後半31分、遠藤康と交代で入った鈴木優磨が左に入り、同時に2トップの一角を占めていた土居聖真が左に回ると、左右の関係はすっかり整備された。中盤でも、成長著しい三竿健斗がレオ・シルバとともに、鹿島らしいクレバーなプレーを見せる。終盤に強い鹿島の本領を発揮する舞台は、これで万端整った。磐田もホーム戦の手前、攻めに出なくてはならない。打ち合いを挑まざるを得なかったことも、逆に鹿島には幸いした。

 79分、81分と、鹿島は終盤、立て続けに得点に紙一重のチャンスを掴んだ。そして86分、右サイドバックの伊東が、狙いすまして送り込んだセンタリングに、ファーサイドで待ち構えていた左サイドバック山本脩斗が、ヘディングで合わせると、大逆転劇は成立したかに見えた。

 ボールはしかし、無情にも際どくバーを越えていった。最後は運のなさ、ツキのなさも手伝う、鹿島には"追ってギリギリ届かず"の惜しい「敗退劇」となった。

 ノーゴールに終わったとはいえ、「後半に強い鹿島」の本領は、この試合でも十分に発揮された。しかし、点を奪わなければ後がない切羽詰まった状況と、それはミスマッチの関係にあった。前節の柏戦もしかり。過去19冠の王者らしい、慎重な戦いぶりが最後にきて仇(あだ)となった。

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