川崎Fを優勝に導いた小林悠が
「あれが転機」という深いインタビュー

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 内容よりも結果──それは、タイトル獲得を目指すうえで、小林の中で新たに芽生えた本心である。一方で、小林の中には異なる感情がある。キャプテンとしてチームのことを考えた感情を縦軸とするならば、それとは平行することのない横軸が存在する。

 彼が持つもうひとつの軸は、ストライカーとしての感情である。寝室の扉に貼られた最後の1枚には、しっかりと「得点王」の文字が刻まれているのだ。

 小林自身、自らの中にあるふたつの異なる感情に気づいたのは、おそらくこのインタビュー中でのことだろう。

「キャプテンとして変わったところは何か?」という質問に対して、小林は「若手に対しても、積極的に声を掛けるようになりました」と答えた。具体的に聞けば、今季加入したFW知念慶(愛知学院大→)とのエピソードを教えてくれた。

「あいつは、すごくいいものを持っていると思うんですよ。ただ、僕が若いときもそうでしたけど、なかなか試合に絡めるわけじゃない。だから、『オレが若い頃は試合に出るために紅白戦のときには、ゴールしか狙っていなかったよ』って言ったんです。『周りに何を言われようが、FWは点を取らなければ、メンバー入りすることはできない。オレはそこにこだわったから、プロ2年目の途中から試合に出られるようになった』って。

 あいつがそれを聞いて、どう感じたかはわからないですけど、『どんな形でもいいから、とにかくゴールにこだわれ』ってことは伝えました。試合に出なければ、経験も成長もできないと思うから」

 そう言ってから、ハッとしたのか、小林は話のテーマを自分に戻した。

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