我々がいるべき場所はJ1。変幻グランパスは堅守アビスパを崩せるか (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Matt Roberts - JL/Getty Images for DAZN

 名古屋にツキがあったのも確かだ。61分の同点ゴールは、相手DFのクリアボールがMF田口泰士の右腕に当たり、こぼれたボールを田口自らが拾ってシュートを決めたものだった。本来なら、ハンドの反則が適用されるべきプレーである。

 しかし、そのワンプレーが勝敗を分けた要因のすべてではないだろう。

 千葉は攻守両面で自らの武器を封じられ、なかなかリズムに乗ることができなかった。互いに長いボールを用いたことで、行ったり来たりが激しくなった試合は、名古屋にとっても本来望むものではなかったかもしれないが、そうした慌ただしい展開が、徐々に選手個々の能力(技術と言い換えてもいい)の差を浮き彫りにしていった。

 すなわち、名古屋優位の展開である。佐藤寿が語る。

「ジェフは今まで積み上げてきたものを出せたから(シーズン終盤で)連勝できた。でも、やることがはっきりしているのでわかりやすい。逆にジェフは、システムも含めて、こっちがどうやってくるかはわからなかったのかもしれない」

 こちらがチョキを出すと予想して、相手はグーを出してくるなら、パーを出せばいい。

 もちろん、千葉がそこでチョキを出せるなら勝機はあったが、自らが目指すスタイルをシーズン終盤にようやく確立したばかりとあっては、チームとしても選手個人としても、そこまでのオプションは備わっていなかったということだろう。

 選手個々の能力で優位に立つ、名古屋だからこそできた千葉封じだった。殊勲のハットトリックを決めたシモビッチは語る。

「90分間ゲームをコントロールしていたのは、自分たちのほうだった」

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