欧州遠征2戦を見た福田正博は、ハリルJのどこに一番不安を感じたか (4ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 藤田真郷●撮影photo by Fujita Masato

 そのため、2010年の南アフリカW杯で日本代表を率いた岡田武史監督は、この「残り20分でのペースダウン」を回避するため、それまで築いてきた「前線からの激しいプレスとショートカウンター」のスタイルを捨てて、「自陣に引いて守備を固める」方針に転換した。また、2014年ブラジルW杯のザッケローニ監督は、就任当初からメンバーを固定してコンビネーションを成熟させ、体力勝負に持ち込まず、フィジカルコンタクトの局面がなるべく少なくなる「パスを主体とするポゼッションスタイル」を志向した。

 では、ハリルホジッチ監督はどうか。前線から積極的にプレスをかけていき、フィジカルコンタクトの激しい今のスタイルでは、体の大きな相手であっても常に"デュエル"が求められている。中盤で井手口陽介のような170cmの小柄な選手が、ブラジルのカゼミーロ(185cm)のような体の大きな相手とぶつかれば、それだけで体力を消耗していく。ボクシングでいえば階級が違う。身長180cm以上あるCBの吉田、昌子源らも、ベルギー代表のFWルカク(191cm・94kg)のような大きな選手と90分間対峙し続けなければならない。

 フィジカルで日本より上回る相手に、日本代表がフィジカル勝負のサッカーで挑めば、徐々に疲弊してしまい、試合終盤にゴールを決められる危険性が高くなる。だが、この課題にどう対応するかは手つかずのままだ。前線からプレッシャーをかけ、ボールを奪ったら縦に速く展開していく攻撃は、再びボールを奪取される確率も高い。そういった攻守の切り替えをふまえ、90分間でのペース配分を考えていくべきだろう。

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