アルビレックス「らしさ」を失い降格。荒野からの再生に何をすべきか (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Masashi Hara - JL/Getty Images for DAZN

 中野社長とともに会見の場に立った神田勝夫強化部長は、新潟のサッカーとはどんなものかと問われ、「ポゼッションであろうとカウンターであろうと、どのタイミングで攻めるのかを、ピッチ上で選手が判断できなければいけない。その判断ができないと、どういうサッカーかは見えてこない」と語った。

 それが理想であることはよくわかる。だが、高い志も、悪く言えば具体性に欠く。昨季15位でJ1残留が現実的な目標となるクラブとしては、考え方があまりに漠然とし過ぎている。

 もちろん、スタイルの転換はあっていい。呂比須監督が「狙うサッカーと、できるサッカーは違う」と話したように、現有戦力に応じた戦術変更は当然、ありうる。

 だが、スタイル転換をするならするで、それを前提にチーム編成がなされたのか。あるいは、選手がそれを理解し、納得していたのか。大野の「モヤモヤしたなかでやっていることが多かった」という言葉を聞くと、そこに疑問を感じざるを得ない。

 思えば昨季最終戦、J1残留の瀬戸際にいた新潟は、広島に1点をリードされているにもかかわらず、あたかも勝利を放棄したかのようにボールを奪いにいこうともしなかった。残留を争うライバル、名古屋グランパスがその時点でリードされており、名古屋と勝ち点で並び、得失点差で上回っていた新潟は、勝つことよりも大敗しないことを選んだからだ。

 恥も外聞もないその様は、いわば最悪な形での残留確定だった。お金を払って試合を見に来てもらうプロとして見せてはいけない試合は、せめてそれを前向きに考えるなら、危機感を抱くのに、これ以上ないチャンスだったのだ。

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