セレッソ大阪、ルヴァンカップ優勝。
初の戴冠に至る「ふたつの伏線」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 得意とするパスワークでどうにかセレッソの堅陣をこじ開けようとするも、なかなか穴を見つけられない川崎は、武器であるはずの細かなつなぎを放棄し、次第にサイドから単純なクロスを放り込むようになった。

 75分に右サイドバックのDFエウシーニョに代え、FW知念慶を投入したことで、その川崎らしからぬ攻めは一層色濃くなっていく。

 一か八かの戦略変更は、しかし、むしろ川崎の手詰まり感ばかりを強くした。

 MF水沼宏太は「(0-1のまま)時間が経てば、プレッシャーがかかってくるのは向こうだと思っていた」と言い、こう続ける。

「川崎がパワープレーをしてきた時点で勝ったなと思ったし、試合後に話したら、みんなそう言っていた。普段しないことを仕掛けてきたのは、(川崎が)このままでは無理だな、と思ったからだと思うし、そういう展開に持ち込めたのはよかった」

 焦る川崎を尻目に、セレッソは試合終了直前、カウンターからMFソウザがダメ押しの2点目を奪い、勝負を決めた。あまりに明暗分かれる非情な決戦を制し、セレッソはクラブ史上初タイトルとなるルヴァンカップ初優勝を手にした。

 ライトに照らされ、輝くトロフィーを傍らに、尹晶煥監督が緩んだ表情で語る。

「監督になって初めての優勝。今の気持ちをどう表現していいのかわからないが、最高の気分だ。昨夜は緊張しすぎて寝違えたので、少し首が痛いけど(笑)」

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