勝利の女神は消極的な川崎Fにそっぽを向き、勇敢な浦和に微笑んだ (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そして35分、FW興梠慎三が同点ゴールを奪うと、試合の流れを完全にその手に掌握する。38分に川崎F左サイドバックのDF車屋紳太郎が退場となり数的優位を手にしてもなお、浦和は決して嵩(かさ)にかかって攻め込むようなことはしなかった。その落ち着き払った試合運びは、ビハインドを背負っていることを忘れさせるほど。もちろん、さらなる失点が終戦を告げることを理解していたのだろう。しかし、得点が求められる状況のなか、このままではいけないという焦りがどこかで生じてもおかしくはなかった。

 それでも浦和が落ち着いて試合を運べたのは、川崎Fのほうの問題によるところが大きい。

「川崎は普段はもっと前からプレッシャーをかけてくるチームだけど、(試合前の時点で)2点差あるし、さらに1点獲ったという余裕があったのかなと」

 MF柏木陽介はそう推測したが、川崎Fがプレッシャーをかけず、後方での対応を選択したことで、浦和は苦もなくボールを保持し続けることができたのだ。

 柏木が「余裕がある」と感じていた川崎Fだが、時間が経つにつれて次第に追い込まれていく。もちろん数的不利に陥ったことは何より痛かったが、ファイティングポーズを取らず、ただただガードを固めるだけの戦いに希望は見出せなかった。余裕を失い、焦りが生じ、そして崩れ落ちる――。彼らはそんな悲劇のシナリオへと突き進んでいたのだ。

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