迫る降格圏。それでも「残留の達人」
ヴァンフォーレ甲府は自信あり

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Ken Ishii -JL/Getty Images

 吉田監督は自戒を込めるように語っている。

 甲府は終盤、FWウィルソンも投入。前線に圧力をかけた布陣で、事故が起こる確率を増やし、ベタ引きした清水を攻め立てた。長いボールを高い技術で収めたリンスが、中央にシュート性のクロスを送り、これがドゥドゥの体に当たってゴールかと思われたが、ポストの外に逸れていった。結局、90分で清水の3倍以上の16本のシュートを浴びせたにもかかわらず、一度もゴールネットを揺らせずに敗れた。

「内容的には攻撃も守備も自分たちのやりたいことができているし、選手は自信を持っている」

 甲府の選手たちは口々に言う。もちろん、それは必ずしも残留できる根拠にはならない。サッカーは理屈だが、勝負は理屈ではないからだ。

 ただ、甲府は「サッカーの芽生え」をずっと求めていた。果たして、甲府は残留できるだろうか?

「サッカーになってきている手応えはある。俺はできると思う。クラブはスタッフも含めて腰が据わっているし、こういうプレッシャーに慣れている」

 吉田監督は快活な笑顔を浮かべた後、ギュッと口もとを引き締めた。今回の残留争いを乗り越えることができたら――それは甲府にとって、過去の残留とは違った意味を持つことになる。

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