60歳ラモスの怒声とパス。
永井秀樹が引退試合で伝えたかったこと

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

 ラモスに呼応して、カズが動き出しパスを交換する。北澤が縦にドリブルを仕掛ければ、武田はゴール前でチャンスをうかがって、きっちりと得点を決める。まさしく黄金期のヴェルディを彷彿とさせる抜群の距離感、パスワークとリズムとテンポ、絶妙なプレーの連続に、スタンドは大いに沸いた。

「ラモスさんがボールを持てば、どこに動けばいいか。カズさんはどこのポジションを取るか。皆、言葉を交わさなくても自然とできるのが、『黄金時代』のヴェルディ。何も指示されなくても、理想の距離を作れる。トントントンとボールを回せて、理想的なリズムが勝手に完成する。何年経っても、その感覚は変わらない。

『ヴェルディらしいサッカー』ってマスコミは言うけれど、結局、当時のメンバーでなければ、あのサッカーはできない。Jリーグが開幕してからの何年間かだけだよ、いわゆる『ヴェルディらしいサッカー』ができたのは。だから強かったし、チャンピオンチームにもなれた。

 それ以降は、メンバーも変わってしまった。ユニフォームはヴェルディかもしれないけれど、中身は全然違った。『ヴェルディらしいサッカー』なんてない。それを(誰もが)わからないといけない」

 永井とラモス。"師弟関係"による最大の見せ場は、後半16分に訪れた。

 1点を追う『VERDY LEGENDS』は、左サイドにいたカズが中央の北澤にパス。北澤がすぐさまラモスへ預けると、ラモスはゴール前に走り込んだ永井に絶妙な浮き球のパスを送った。流れるような展開からボールを受けた永井は、そのまま右足を綺麗に振り抜いてゴールネットを揺らした。 

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