60歳ラモスの怒声とパス。永井秀樹が引退試合で伝えたかったこと (3ページ目)

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

 実は、ヴェルディの未来を創っていくべき若手選手のために、永井は『VERDY LEGENDS』のユニフォームをサプライズで準備していた。しかし残念ながら、澤井と井上、そしてGKの柴崎貴宏以外は参加できなかった。それはこの日、最高の舞台で花道を飾ることのできた永井にとって、唯一の心残りとなった。

 ピッチ脇には、永井が現在指導しているユースで活動する選手たちの姿もあった。永井が言う。

「言葉でいくら説明しても限界がある。『じゃあ、実際に見せたらいい』と思った。自分たちの監督の引退試合だから、ということではなくて、自分が常日頃から伝えている『ヴェルディがどれだけ強かったか』『その強かった時代を、おまえたちの力で取り戻せ』という話の意味を、ユースの選手にも心から感じてほしかった。

 とにかく、ピッチに一番近い場所で、選手たちの声も聞こえる場所で、(黄金時代のヴェルディの雰囲気を)体感してほしかった。お客さんの反応もピッチにいればよく見えるしね。そうして、選手たちはそれぞれ、感じ取ったものがあったと思う。後日、『僕たちで新しいヴェルディを作ってみせます』と言ってきた選手がいたんだけど、それが心底うれしかった」

「ヴェルディらしいサッカー」なんてない
当時のメンバーだからできたこと

 午後6時30分、うっすらと明るさが残る西が丘サッカー場に、試合開始を告げるホイッスルが鳴り響いた。

 試合が始まると、ラモスはピッチ上でも熱かった。真剣に、最高のプレーを披露した。昨年末に脳梗塞で倒れ、今も体調は万全とは言えない。だが、ひとたびピッチに立てば、衰え知らずの華麗な技を次々に繰り出した。

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