新国立競技場にサッカーファンの疑問。
スタンドがなだらかすぎないか?

  • 杉山茂樹●文・写真 text & photo by Sugiyama Shigeki

 サッカーの観戦通が求めるのは俯瞰という視点。どれだけ鋭い視角でピッチをのぞき込むことができるか。この欲求に新国立競技場は応えることができていないのではないか。少なくとも3万4000席がサッカー観戦の魅力を堪能できない設計になっている。その方向で建設が始まり、すでに緩い傾斜角の骨組みを露出させている。

 スタジアムの寿命は約50年。改修すれば寿命はさらに延びる。一度建設されたら、壊せない巨大建築物だ。後世へ残す遺産。まさにレガシーだ。可能な限りよいものを後世に残す義務がある。

 当初のザハ・ハディド案が、建設費が高額すぎてキャンセルになったという経緯があるので、コストについては、国民もメディアも大きな関心を寄せていたが、新国立競技場に何を望むのかという中身の議論は進まなかった。

 その模型を見ることができた人もごく僅か。スタンドの傾斜角に問題ありと言い出す人はいなかった。関係者にそれを重視していそうな人が見当たらなかった。危うさは当初から漂っていた。起こるべくして起きた事態。悪い予感が的中した格好だ。

 五輪後、6万人収容から8万人収容の球技場に変貌する新国立競技場の姿は、いったいどこに行けば見ることができるのか。それにともなって1階席部分はどう変化するのか。世の中には許しがたいものが数多く存在するが、これなどはその最たるものになりかねない。事後承諾はできない。

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