川崎Fのすさまじい攻撃。「4バックを捨てた」鹿島の動揺を見逃さず (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 前半のアディショナルタイムだった。自陣でボールを奪った川崎Fは、大島からのパスを受けたMFエドゥアルド・ネットが前に持ち運ぶと、阿部にパスをする。さらに右サイドで家長がボールを受けると、ゴール前にラストパスを送った。特筆すべきはパスを出した大島も、阿部も、出して終わりではなく、チャンスと見るやゴール前に走り込んでいたことだろう。大島が振り返る。

「アキさん(家長)がボールを持ったときに、阿部ちゃんがこっちを見たので、スルーするだろうなって思った」

 結果的にオウンゴールにはなったが、家長のラストパスに対して阿部がスルーすると、ボールは大島のもとへ。大島は「全然、触ってないんですよ」と笑ったが、懸命に戻ってきたDF西大伍の足にあたり、先制点となった。

 それまで川崎Fの猛攻を耐えていた鹿島だったが、その直前に3バックへと変更し、明らかに攻守のバランスが崩れていた。ポジショニングやマークの所在が不透明になり、それがゴール前でフリーな選手を作り出す結果となった。

 鹿島が4バックから3バックにシステム変更したのは、MFレアンドロとDF登里享平が接触して試合が止まっていた前半38分である。川崎Fも先制点を決めた時点では、相手がシステムを変えたことに気がついていなかった選手もいたほどだが、彼らにはその隙を見逃さない嗅覚が備わっていた。

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