まだ「ペトロビッチの遺産」頼み。浦和レッズは混迷から抜け出せず (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Etsuo Hara─JL/Getty Images

 それは欧州で語られるフットボールの定説だが、単純な理屈である。出場機会に恵まれなかったサブ組の士気はいやがうえにも高まるし、先発組は尻に火がつく。監督交代はカンフル剤。一時的な効果は出る。浦和は勝利することで、勢いを味方にしたかったはずだ。

 試合序盤は大宮が前からプレスをはめ、浦和に自由を与えなかった。5-4-1の布陣の中盤はスクエアで、マンツーマンに近いプレス。これを外されると、リトリートしてブロックを作る。この戦い方が15分くらいまでは功を奏していた。

 ただ、次第に浦和はチーム力の差を見せつけ、大宮のラインをずるずると下げさせる。

「サイドから崩していって中へ」(浦和・関根)

 ペトロビッチ監督の作り上げた"サイドから万力で締め上げるような"攻撃を展開する。シーズン2度目の先発出場になったズラタンは積極的にシュートを放ち、高さ、強さで大宮DFを手こずらせる。左サイドでは、同じく出場機会の乏しかった菊池大介が躍動。チームに幅を与え、チャンスを広げた。

 そして26分だった。押し込んだ後、大宮DFのハンドを誘発。これで獲得したPKを興梠慎三が落ち着いて流し込んだ。

 先制した浦和は横綱相撲を見せた。後半も守備の綻びは見えない。大宮が3-5-2と前がかりになって、中盤をアンカーにして攻め手を増やしてきても、きっちりといなしていた。

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