ケガを味方にして己を高めた石川直宏。引退を発表も「まだ終わりじゃない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLO

 2006年に右足靱帯断裂から復帰すると、タッチラインからゴールをアシストするだけでなく、中央に入って積極的にゴールを狙うプレーに取り組むようになった。次第にプレースタイルを変化させ、2009年には得点力のあるサイドアタッカーとして覚醒。リーグ戦15得点でベストイレブンに選ばれ、岡田武史監督率いる代表にも復帰した。その絶頂期に今度は左膝靱帯を断裂したわけだが、力強く復活し、2012年にはアルベルト・ザッケローニから代表招集を受けている。

 ケガから蘇る姿は神々しくさえ映る。それはさながら不死鳥のようだった。FC東京の後輩選手たちは、石川の誠実さと忍耐強さを尊敬してやまない。しかし、復帰に励む本人は切実な心情も口にしていた。

「でも、俺はピッチでプレーしたいだけですよ」

 石川は静かな物言いに熱を込めた。

「チームでの立場を考え、黙々とトレーニングしていると、『すごいっすね』と若手には言ってもらえる。なにかが伝わっているなら嬉しいんですよ。それがチームの力になっているなら救われるし、ケガしていても何か役に立ちたい。でも、同時になんか違うなっていうのもあるんです。俺はリハビリを頑張っている姿を見せたいわけじゃないから」

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