J3に降格したチームがハマる底なし沼の正体。北九州は抜け出せるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Takashi Aoyama - JL/Getty Images for DAZN

 クラブとしても、1年での昇格は至上命題になる。降格したクラブはその年、J3の平均以上のサラリーを支出することになる。だが昇格に失敗した場合、その戦力は維持できなくなる。スペイン語、イタリア語、ポルトガル語では、下部リーグを「地獄」と表現するが、これは降格したときのダメージを指している。底なし沼や蟻地獄にはまった感覚だろうか。

「降格したら次のシーズンに戻らなければならない。それに失敗すると、下に引きずり込まれる。資金繰りが苦しくなり、選手は自信を失い、昇格の体力が尽きる」

 これは欧州サッカーリーグで言われる鉄則で、当然ながらJリーグにも当てはまる。降格した場合、まず収益が落ちる。同時に、チームの求心力が落ちるのだ。

 例えば2013年にJ2からJ3への降格が決まって以来、這い上がれずにいる鳥取は、J2時代に平均4000人以上だった観客が、今や1000人台に落ち込んでいる。このように集客が半分以下になるという現実がある。さらにメディアなどへの露出が減ってチームとしての魅力が下がり、スポンサー獲得が難しくなる......そんな負の連鎖が起こる。一度落ちた穴から這い上がるには、エネルギーが必要になるわけだが、落ちたクラブはそもそも勢いを失っている。

「1年で戻る。それだけで戦ってきた。決して負けられない、という気持ちで」

 昨シーズン、J2・J3入れ替え戦で栃木SCを取材したとき、スタッフがそう洩らしていたが、結局、昇格は果たせなかった。

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