横浜FMを戦力外になった小林祐三が語る
「鳥栖で選手が再生する理由」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Masahiro Ura - JL/Getty Images

「(鳥栖には)恩を感じますね。なかなか返しきれないほどの」

 今シーズン、横浜F・マリノスから移籍してきた右サイドバック、小林祐三(31歳)は神妙な顔つきで語っている。昨年末、6年間在籍した横浜から戦力外通告を受けた。昨シーズンも33試合に出場し、絶対的主力として存在感を示していただけに、青天の霹靂(へきれき)だった。

「自信を持ってプレーしていたのにアウトになってしまって。そんな自分に、鳥栖は手を差し伸べてくれた。正直、しっかり自分を見てもらえないなら、やめてもいいかな、とへこんでいたので。救われた気がしましたね」

 しかし、本当の試練はそこからだった。小林は「すぐに活躍してアピールを」と意気込んでいたが、膝に痛みが走る。軟骨がはがれかけ、ジョギングするだけで、鈍器で叩かれるような痛みを感じた。どうにか20分走れても、次の日は3分も走れない。不安は募った。結局は医師のセカンドオピニオンを採用し、手術で軟骨をクリーニングしてから鈍痛は消えた。

「移籍のタイミングだったので、『不良品をつかまされた。いい歳していきなり膝手術かよ』とか思われたらどうしようって。でも、1分も(公式戦で)プレーしていなかったのに、たくさんの鳥栖サポーターの方が『待ってます!』と温かく声をかけてくれたんです。今の自分を受け入れてもらっていると思うと、感謝しかなかったです。スタッフも『焦らないように』って。監督も『ナーバスになるな』と気にかけてくれました」

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