気持ちで掴んだ勝ち点1。森保なきサンフレッチェ広島の小さな一歩 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 前半の広島は、決して悪くはなかった。とりわけ25分過ぎ以降は、後方でしっかりとブロックを作って守り、ボールを奪っても攻め急がず、じっくりとつないで相手のほころびを探り続けた。じわりじわりと相手を追い込んでいくサッカーは、強かったころの広島が十八番としていたスタイルだ。あとはいかにスイッチを入れられるかどうか。後半の戦いに期待が持てる前半のパフォーマンスだった。

 しかし後半に入ると、オープンな展開となり、徐々にバランスを崩していく。スペースが生まれ、カウンターを浴びる機会が増加。とりわけ左サイドに回ったMF齋藤学のドリブルに手を焼き、鋭いカットインからあわやというシーンを作らせてしまう。

 それでも、何とか耐えしのぎ、反撃の機会をうかがったが、81分、その齋藤のドリブルが起点となり、途中出場のMF前田直輝にゴールを許してしまう。

 万事休す。健闘しながらも、最後にやられてしまう――。降格するチームにありがちな試合展開を目の当たりにし、そう思わざるを得なかった。

 しかし、この日の広島はここからが違った。

「先制されて、非常に苦しい状況でしたけど、みんなのメンタルは落ちていなかったし、交代の選手も含めて、点を獲りにいくという強い気持ちが今日はあった」

 千葉が言うように、そこからの10分間、広島の選手たちはまさに死に物狂いで、横浜FMゴールへと襲いかかった。

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