Jリーグからのベルギー派遣コーチに聞く「欧州の育成は何が違うか」 (4ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko

――坪倉さんにも、これまで指導してきた実績もありますしね。

「それはそうですけど、そういうことって、外部から研修に来ているコーチに普通は聞けないものだし、あちらにもプライドがありますから、聞いたとしてもなかなか実行できないものです。プライドは持ちながらも、それをパッと変えられる柔軟性、許容範囲の広さを感じました。そうするとそのコーチとはぐっと距離が縮まって、急に『練習で2グループに分けるから、ひとつはあなたが見て』みたいな感じで振られたりもしています。

 あるとき、『今度のトーナメントには16人しか連れていけないから、3人余ってしまう。私の中で、外す2人は決まっているけど、あと1人、あなたならどうする?』と聞かれました。アンデルレヒトに来て7週目、U-13についてからはまだ1週目でした。『ちょっとしか見ていない僕の意見が取り入れられて、その子が外されたら悪いし、僕は評価できないよ。あなたのほうが長く見ているし、性格も含めてジャッジできるでしょう』と答えると、『それはそうだ。ただ短い時間でも、あなたはどう思った?』と言うんですね」

――意見はありますか、と?

「そうなんです。意見は言ってもなんら問題ないんですよね。逆にそういう時に意見を言えないと、ここで何をしているんだという感じなんですよ。こちらに来て本当に感じるのは、『思っているのにどうして言わないの』ということです。何かを思っていても、立場的に遠慮したりするのが日本的ですが、こちらにいると逆ですね。何も言えないと、もう相手にされないというか。そこには大きな違いがありますね」

4 / 9

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る