広島・森保監督の退任に思う。クラブはビジョンを見失っていないか (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 同時にクラブは、3度のJ1優勝に貢献したFW佐藤寿人(名古屋グランパス)が移籍で退団し、MF森﨑浩司が現役を引退するなど、世代交代を敢行した。彼らに代わってMF青山敏弘やDF千葉和彦、さらにDF塩谷司(6月にアル・アインへ移籍)らがチームを牽引していく覚悟を持って臨んだが、結果、内容ともに伴わず、次第にそのパフォーマンスにも影響を及ぼすようになった。

 ひとつターニングポイントを挙げるとすれば、3-3で引き分けたJ1第8節のベガルタ仙台戦だろう。かつての広島なら2点を先取すれば、確実に勝利できる試合巧者だったが、仙台の反撃に付き合い、自分たちもさらに前への圧力を強めてしまった。試合終了間際に追いついたとはいえ、立て続けに3点を奪われ、勝ち点を取りこぼす。

 顕著だったのは、ピッチに試合をコントロールできる選手が不在だったことだ。2点のリードを奪っておきながら、広島は攻撃に打って出たことで逆にスペースを与えると、その綻(ほころ)びを突かれたのである。

 なかなか浮上できない状況に、森保監督は原点に立ち返ろうと昨季までの戦い方に戻したが、自信を失った選手たちは、かつての自分たちすら取り戻せなかった。その当時、森保監督が話してくれた言葉が思い起こされる。

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