フランクフルト移籍の鳥栖・鎌田大地は「バックミラー」が付いている (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Masashi Hara -JL/Getty Images for DAZN

 イタリア人指揮官はそう言って、太鼓判を押した。

 この日の浦和レッズ戦でも、鎌田は前半にダイレクトで背後に走るビクトル・イバルボにスルーパスを出し、決定機を作っている。簡単に見えるが、容易(たやす)いプレーではない。

 鎌田の才能は、スペイン語で言うRETROVISAR(バックミラー)にあるだろう。背後を含め、視界が人並みはずれて広い。それによって空いたコース、スペースを見つけられる。そこにボールを運ぶ、入れる、という高い技術も目を見張るが、ビジョンこそ彼の異能と言えるだろう。

 そして、ビジョンによって相手の裏を取れる。

「めっちゃ速く感じる」と、対峙した選手は洩らす。どこで止まって、どこで加速するかを心得ているだけに、敵に想像以上のスピード感を与える。キックフェイントひとつをとっても、ピタリと足を止め、逆をついて運べるため、歩いているように見えるのに、不思議と相手を置き去りにできる。わずかなボールの置きどころの違いで、狡猾に相手の重心を動かすのだ。

 自らタイミングを作れる選手で、それは「時間を操る」に近い。

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