あの一戦で川崎F・小林悠は変わった。「内容より、今は勝てればいい」 (5ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そうやってコミュニケーションを取る回数を増やしていくことで、阿部ちゃんなどはチームにすごくフィットしてくれた。そのあたりから、阿部ちゃん自身のゴールも多くなったりして、だいぶ今は楽になってきたところはありますよね。選手間でミーティングもしましたけど、それ以上に練習の合間、合間で、個々に話をしていくことで、チームとしてもよくなってきたと思っています」

 オセロのように、一気にすべての石をひっくり返すのは難しい。小林は、一つひとつの石を黒から白に変えていく作業を惜しみなく続けていった。

 キャプテンであるがゆえに、結果が伴わない時期には小林の表情もどこか曇りがちで、思いつめているようにも映った。そのことを問うと、「そりゃ、責任は感じますよね」と即答し、笑った。そして、今は一点の曇りもない澄んだ瞳をこちらに向けて、こう続けた。

「(いろいろなものを)背負いすぎているというのもわかっているんですけど、キャプテンをやることで、選手として、人間として、すごく成長させてもらっているなと思っています。1年目から全部がうまくやれるわけはないとも思っていましたし、難しいことも含めて全部、自分の成長につながると思っている。それに、キャプテンだから、背負う部分は大きくていいと思っているんです」

 小林がこだわる結果がついてくるようになると、表情にもかつての明るさが戻ってきた。それもまた、キャプテンとして成長した証でもあるのだろう。

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