あの一戦で川崎F・小林悠は変わった。「内容より、今は勝てればいい」 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 迎えた今季のJ1リーグでは、開幕戦こそ勝利したが、続く第2節のサガン鳥栖戦は1−1で引き分けた。小林自身は連続得点を記録したが、新加入選手が多かったこともあり、攻撃の歯車は噛み合わず、試合後のミックスゾーンではチームに対する憤りをぶちまける一幕もあった。

「勝っていれば、内容が悪くてもいいかなとは思っていたんですけど、内容も結果も両方が伴わなくて、実際、攻撃も全然怖くなかった。だから、『自分以外に(得点を)決められそうな人がいない』って言ったんです。もっと自分が、自分が、という選手が出てこないと、この先、勝てないなって感じていましたし、そうした発言をすれば、周りが奮起してくれるかなとも思った」

 チームからは、「キャプテンになったら記事になることも多いから、何でもかんでも思ったことを言わないようにって注意されました」と小林は笑う。最近は発言にも注意していると言うが、「後悔はしていない」と語気を強めるほど、小林は危機感を募らせていた。

 その後も川崎は、AFCチャンピオンズリーグを並行して戦う中、第6節から第9節まで4試合勝ち星から遠ざかるなど、復調のきっかけをつかめずにいた。だが、第10節からは3連勝を飾り、大きく息を吹き返す。

「内容が悪くても、勝てればそれでいい」と言う小林悠「内容が悪くても、勝てればそれでいい」と言う小林悠 転機になったのは、引き分けが続いていた最中の清水エスパルス戦(第8節)を前にして、鬼木監督が行なった原点回帰だった。小林も「(清水戦を前に)オニさんが守備のことばかり植えつけてきたけれど、もう1回、攻撃的なサッカーを見せようと言ってくれて、みんなも頭がリセットされたというか、すっきりしたところはありました」と話す。

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