あの一戦で川崎F・小林悠は変わった。「内容より、今は勝てればいい」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 半年経った今も、昨日のことのように悔しさがぶり返してくる。それは、話を聞いたこちらが申し訳なくなるほどだった。自身のキャリアにおいて初めて臨んだ決勝で、彼が強く感じたのは、戦う姿勢だった。

「率直に言って『戦っていないな』って思ったんですよね。天皇杯決勝でも、球際で負けるシーンは多かったですし、鹿島みたいにセットプレーで決めるというよりも、どこかでやっぱり僕らは内容を重視していた部分が強かったのかなと。昨季は点が多く取れる試合もたくさんあって、プレーしていてすごく楽しかったですし、それ自体はよかったんですけど、結局、勝負どころの試合で勝てなかったという現実を突きつけられた。

 それはなぜかって考えたら、目の前の一つひとつのバトルに勝つ、勝てないというのが、決勝の大舞台で出てしまったのかなって......。だから、自分がキャプテンになって変えていかなければならないのは、そういうところだなって」

 今シーズンより指揮官に就任した鬼木達監督に、キャプテン就任を打診されたのは、シーズンインして間もない、宮崎キャンプ3日目のことだった。監督の部屋に呼ばれると、「変にキャプテンだからと意識せず、チームにピッチの中で戦うことだったりを、悠なりに伝えていってほしい」と言われた。小林自身も「呼ばれたときから、キャプテンの話かなとは思っていた」と、経緯を語る。

「自分もそろそろ(キャプテンを)やらなければなという気持ちもあったから、その場で『がんばります』みたいな感じで、すぐに返事をしました。実際、自分自身もフロンターレに足りないのは、ピッチで戦う姿勢であったり、球際で負けないことだったり、純粋に走るというところだと思っていたので、今もですけど、開幕前からそこは厳しく言うようにしています」

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