スペインの名将がヴェルディで実践する「J2を戦うためのサッカー」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 これを踏襲したスペイン人指揮官はリアリストに徹して、勝利を目指しているのだろう。

 例えばDFからMFにパスの出し入れを繰り返し、右ウィングバックの高木大輔に展開して相手の脇をえぐる。それはすでに局面を破る戦術のひとつになっている。また、左サイドも左センターバック・平智広、左ウィングバック・安在和樹の2人はとも左利きで、左で持てるためピッチを最大限に活用。京都戦の先制点も、平から左足でゴール逆サイドにクロスが入って、裏にいたドウグラス・ヴィエイラが左足で決めたものだ。

 後半は京都のパワーに押し切られたが、ロティーナは淡々と試合を振り返っている。

「後半は暑さもあったが、前半のようにポゼッションをできなくなった。はっきり言えば、中盤に(井上)潮音がいないのは響いている。代わって出ている選手たちはよくやっているが、ボールを持てる時間をもっと増やしたい。自分たちがコントロールできていたら、まるで違う展開になっていただろう」

 5節に故障で交代して以後、井上はチームを離脱。そのセンスはJ2では突出しているだけに、やりくりは簡単ではない(代わりの選手は寄せて入れ替わられる場面が多かった)。

 プレーメーカーだけでなく、シャドー(トップ下)も人材を欠いた。8得点でゴールランキング2位のアラン・ピニェイロが出場停止で、前線の迫力不足は明白。今のヴェルディの戦力では、ケガや出場停止で主力を失った場合、それを完璧に補うのは難しい。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る