「もう戻れないと思った」森﨑和幸が、苦境のサンフレッチェを救う (6ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 度重なる慢性疲労症候群の発症に、「今回は、年齢的にも本当に戻って来られないと思った」と森﨑は語る。それなのに「なぜ、復帰できたのか?」と聞けば、こう答えた。

「正直、その理由は今もわからない。でも、強いて挙げるとすれば、周りでしょうね。例えば、子どもが通っている幼稚園の知り合いの方から『待ってますからね』と言ってもらったり、家の修理で来た人に『戻ってくるって信じてますから』って言われたりしたということを、妻から間接的に聞いたんです。しんどいながらも、自然とそういう声が耳に入ってきたんですよね。そうしたひとつひとつが力になった。だから、自分から戻ろうというよりも、正直、周りの力で戻らせてもらったという感じですかね」

 広島に生まれ、広島で育った。5月9日に36歳になったばかりの森﨑は、サンフレッチェ一筋でプロ18年目を迎え、ユースから数えれば在籍は21年目となる。

 森﨑が全体練習に合流した頃、森保監督にそのことを尋ねると、険しい表情が一瞬緩み、こう話してくれた。

「カズのような選手は、作ろうとして作れるものではないんですよね。彼がいるだけで、他の選手たちが安心しているのがわかる」

 苦境に立たされているサンフレッチェ広島が復調するための最後のピースはそろった。"ピッチの指揮官"は、まさに生まれ育った広島のために戻ってきた。

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