「もう戻れないと思った」森﨑和幸が、苦境のサンフレッチェを救う (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 試合後、森﨑に聞けば、「チーム全体に声をかけられるわけではないので、出し手と受け手の呼吸を合わせただけで、特別なことはしていないですよ。サッカーにおいて、当たり前のことを当たり前にやっただけです」と謙遜したが、森保監督もその効果を実感していた。

「『勝ちたい』という思いから、チームはギアが上がっている状態でしたけど、(森﨑が入って)攻守含めて落ち着きを取り戻して(チームに)自信をもたらしてくれました。加えて、中だけでもなく、外だけでもなく、中に入ったら外へ、外に行ったら中へと、ボールを出し入れしながら相手を動かし、スキをついていくというか。本来の自分たちがやってきたことを、カズが実践して見せてくれましたよね」

 まさに森﨑がサンフレッチェにおいて、「ピッチの指揮官」と呼ばれるゆえんがわかるような試合だった。

 結果的にヴィッセル戦は1−1の引き分けに終わり、浮上のきっかけにすることはできなかった。順位はいまだ降格圏となる16位に低迷しており、今季初のリーグ戦に出場した森﨑は、危機感を強めている。

「これは、ベンチから見ていても、ピッチに立ってからも感じたんですけど、チームとして基本ができていない。攻撃で言えば、どこでボールをもらえば、味方にとって助かるか、相手にとって嫌かというポジショニングができていない。守備では球際だったり、セカンドボールの意識だったりが足りないんですよね。失点シーンもそうですけど、人数がいるのに足を振り抜かれている。

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