「もう戻れないと思った」森﨑和幸が、苦境のサンフレッチェを救う (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 森﨑はその後、練習場で軽いジョグができる状態にまで回復すると、4月上旬になってチームメイトと同じ時間帯に練習するようになる。同月24日には、今季初となる紅白戦に参加。その姿は、急ピッチで復帰を目指しているようにすら映った。

 というのも、サンフレッチェは4月7日のJ1第6節、対ガンバ大阪戦でようやく今季初勝利を挙げたものの、明らかに攻守の歯車が噛み合わず、その後も黒星が増え続けていたからだ。3度のJ1優勝のベースとなった守備は崩れ、FW工藤壮人ら比較的新しい選手たちが顔をそろえる攻撃は連係を構築している段階で、チームとして機能不全に陥っていた。

 顕著だったのが、2−0から追いつかれ、結果的に3−3で引き分けた第8節のベガルタ仙台戦である。堅守を軸に失点を避け、スキを突いて先制することで試合を優位に進めていくのが、サンフレッチェの必勝パターンだが、自信を失っていたチームは、その常套手段すらできなくなっていた。

 2−0とリードしているのにもかかわらず、さらに前がかりになると、逆襲を受けて立て続けに3失点を喫する。前線は連動性がなく、無闇に仕掛けてボールを失うため、持ち味であるDFラインからの縦パスが入らなくなった。必然的に攻撃は、突破力のあるウイングバックの柏好文を頼ってサイドに偏っていく。だが、クロスを挙げてもヘディングに強い選手がそろっていないため、相手DFに弾き返されていた。

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