もう守るだけじゃない。ヴァンフォーレ
甲府のサッカーが変わり始めた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Hiroki Watanabe - JL/Getty Images

 例えば左インサイドハーフの田中佑昌はJ1屈指の走行距離とスプリント回数で、トップを追い越す動きによって前線にインテンシティを加え、右インサイドハーフの小椋はピラニアのような獰猛なボール奪取で守備の強度を上げる。それぞれの動きが効率的で意味を持っていた。

「(監督に就任したときに)左利きを揃えたかった」

 吉田監督は戦略意図を洩らしている。この日の先発は左センターバックのエデル・リマ、左ウィングバックの阿部翔平、そしてボランチの兵働の3人が左利き。3人とも、今シーズンになってから迎え入れた選手だ。

「自分はサッカーのイメージとして、縦パスを入れたい、というのがある。左で持って、そっちを向かせると、(縦パスが)出しやすくなる。それに、エデルは大外のひとつ内側から前に行ける。左利きの選手を左サイドで使うことによって、ピッチを少しでも広げて使える」

 そう語る指揮官は、左利きを左サイドに起用することで利点を生み出した。左足でタッチラインぎりぎりでボールを持てば横を広く使えるし、それは中で相手を混乱させる。また、左のDFが右足で持てばゴールに近いところにボールを晒(さら)すことになるが、左足なら少しでもリスクヘッジできる。

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