そんな「キャラじゃない」豊田陽平が
鳥栖のキャプテンになった経緯

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 そう言う豊田は、自身の性格にキャプテンの適性を感じていなかった。

「でも、今回(のキャプテン指名)は拒否権がなかったんですよ」と、苦笑いを浮かべる。

 プレシーズンマッチで、ゲームキャプテンを任されることが多かった。「自分じゃなくてもいいのに」と、渋々ながら(キャプテンだったキム・ミヌが退団したこともあって)、暫定的に引き受けた。チームイベントで、選手代表として話す機会も多くなった。その流れか、新体制のイベントを前に「発表がある」と関係者にほのめかされ、もしや、と予想した。そして壇上で、新キャプテンとして任命されることになった。

 つまり、正式な打診は一度も受けていない。

「昔からの自分を知る人には、『キャプテン、大丈夫?』と心配されましたね。自分はマイペースなので」

 もっとも、豊田は主将に任命された瞬間、前向きに気持ちを切り替えたと言う。

「(キム)ミヌが責任感の強い選手で、やらなきゃいけない、と追い込まれるのを見ていました。とにかく、自分は抱え込まないようにと。無理に鼓舞するようなことはせず、肩肘を張らない。(士気を高める部分は)副キャプテンにも頼ろうと。サポートしてくれる仲間はいる、と割り切ることにしました。ピッチの中のことは試合前のコイントスをするくらい。試合が始まってしまえば、いつものように犠牲精神で戦うだけですよ」

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